桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』


赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説


ようこそ、ビューティフルワールドへ。


この言葉の本当の意味は、最後まで読まないとわからない。


大変おもしろかった。一気に読んでしまいました。製鉄業を生業とする『うえのあか』こと赤朽葉家の、千里眼であった祖母・万葉。元伝説のレディースで億を稼ぎ出す漫画家の母・毛鞠。そしてわたしこと孫であり娘の瞳子――三代にわたる女性の生き様、そして彼女らが生きた戦後〜現代を描く。


いやおうなしに時代は流れる。価値観は多様化する。そのなかでひとびとは、ときに必死に、ときに笑顔で、生きた。そう、彼ら彼女らはたしかに生きたのだ。


泪、鞄、孤独という一風変わった名前の赤朽葉家の兄妹たち、彼らの異母姉妹である百代。
万葉の生涯の友となったみどり。
毛鞠が忘れられなかった少女、蝶子。
溶接炉を愛した職工、豊寿。


物語と時代をいろどる個性豊かな人々は、女性も男性もとても魅力的だった。


ようこそ。ようこそ。ビューティフルワールドへ。悩み多きこのせかいへ。わたしたちはいっしょに、これからもずっと生きていくのだ。せかいは、そう、すこしでも美しくなければ。