宝石箱


落ち込んだときやイライラしているときは持っているアクセサリーを取り出して並べてみる。


キラキラしたもの。
つやつやしたもの。
ハートにクロス、王冠やアリス、カメオに蝶、好きなモチーフばかり。


ひとつひとつ、元に戻しながら手に入ったときのことを思い出す。


これはあのときの。どうしても欲しくて何度も売り場に通った。
これはあのひとから。最近もお元気そうでなにより。
これは母から。16歳のバースデイに贈られた誕生石のピアス。


先日、憧れだったジュエリーケースを注文した。早く届いて。
淡いピンクにチョコレートブラウンのラインの入ったトランク型。見せる収納がしたいから開けっ放しにしておきたい。


大きくはないし、一段しかないし、そんなにたくさん入るわけじゃない。でも今の私にはこれ、って思ったの。


これから先、アクセサリーやジュエリー、宝石と呼ぶのがふさわしい高価で豪奢な装飾品に囲まれるか。


それとも『必要なものが必要なだけあればいいの』と、いつも決まったシンプルな指輪やネックレス、ピアスをお守りのように、もうひとつの膚のように身につけ、たまに大人の遊び心でインパクトのあるものも購入する、そんなひとになるのか。


今はまだわからないから。


間接照明だけの部屋のなか、真夜中に、ゆっくりとローズヒップのお茶を飲みながらアクセサリーを整理する。


うっとりとながめながら。
思い出に浸りながら。


終わるころにはこころのささくれも取れている。さあ、お風呂に入ろうかな。先日見つけたソルトの入浴剤も試してみたいし。


そしてバスタブにお湯を入れている間、これから欲しいアクセサリーやジュエリーのことを考える。私のいつも持ち歩いているノートには『何歳までに手に入れたいアクセサリー/ジュエリー』が書かれている。


アンティークのハミルトンの腕時計。

つけているかどうかもわからないくらい小さな、動くと光の反射できらりと一瞬光る、一粒ダイヤのネックレス。

本真珠の、クールなときには長め、カジュアルやかわいらしくしたいときには二連でつけられるように、40cmのネックレス。
バロックパールにも憧れるけれど、それは年をとってからの愉しみにとっておく。


まだまだ数は少ないけれど、これからどんなものがどんなふうに収められていくのか、楽しみでもあり少し怖くもあり。