『3月のライオン 2巻』羽海野チカ



「勝つ理由がない」けど負けると苦しい。将棋に対する中途半端な感情に思い悩む零。ヒナちゃんの片想い。まさか、その相手である野球少年(かっこいい)が零を知ってるとは思わなかった。びっくり。こんなふうに絡んでくるとは思わなかったですよ。


二海堂がね…いいんだ…もう本当に…(泣)貧血起こして倒れるくらい熱くテレビの解説で零に語りかけたり(それでその映像を見たみんなが目から熱い汁がでたり)みんな大好き二海堂。


ハチクロのときもそうだったけど(それをBS漫画夜話で解説されていたけれど)羽海野チカのモノローグは独特だ。


語り手の台詞が入っているのと同じコマにまたモノローグがあったり、画面を横に分断するように入っていたり。3月のライオンでのモノローグは詩的でリリカルでありながら力強い。読んでいるとひきこまれてしまう。


そして香子(義姉)が登場するんですよ…!あの連載第一回目の冒頭で「だってあなたなんてなんにもないじゃない?」っていってたひとですよ、子ども時代に将棋で負けて零ちゃんのことかなり本気でぶったりしてたひとです。熾烈、というか。本誌で読んでたときは登場時の最後のコマの毒のある笑顔にくらくらして続きをー早く続きをーと悶えてました。


だってそれでお泊まりとかしてくんだもん、どきどきはらはらです。でも別になにもないんだけど、零きゅんは香子さんが好きなんだなぁとちょっとしんみりした次第です。


でもその恋は淡い憧憬などではきっとなくて、いろんな痛みや苦みを飲みこんだままの、もはや恋とは呼べない感情なのかもしれない。


そして最後、この話で終わって本当によかった。すごくいい。すぐ前の話でおじいちゃんとの交流があったからこそ、アル中で投げやりで、悲しいことに心の通じ合わない相手との対局が際立ったと思う。
零のあの叫びには圧倒された。


「こっちは全部賭けてんだよ」
「他には何も持てねーくらい将棋ばっかりだよ」


戦う理由が無いと言いながら 本当は 身の内に獣が棲むのを知っている まわりのモノを喰いちぎってでも生きていく為だけに走り出す獣 戦いが始まればどうしても 生きる道へと手がのびてしまう
誰を不幸にしても どんな世界が待っていても
(以上零のモノローグから引用)