『パコと魔法の絵本』


パコと魔法の絵本 (幻冬舎文庫)

パコと魔法の絵本 (幻冬舎文庫)


この映画の踏み絵は阿部サダヲだ。


観てきました。『下妻物語』『嫌われ松子の一生』などで知られる中島哲也監督の最新作、CGと特殊メイクをふんだんに使った過剰でカラフルでドリーミングな画面づくりにほろりと泣けてしまうハートウォーミングストーリーな本作、『事故の後遺症で1日しか記憶のもたない少女(アヤカウィルソンたんのかわいさは奇跡)のために、病院中の嫌われ者、意地悪でわがままで偏屈な老人(役所広司)が彼女の読んでいた絵本を患者医者看護婦巻きこんでみんなで劇にしようとする』話だと知ったとき、これはもうなんか思いついた時点でいろいろ勝ちなストーリーじゃないか?鉄板じゃないか?と思ったものだがいざ観賞してみるとそうでもなかった。


と、いうのもこれはおそらく人によって好き嫌いが別れる、評価の割れる映画である気がするからだ。


まず、CGと特殊メイクで映画全体が覆われているせいで非常にファンタジックになっている。非現実パート/現実パートがあるわけではなく、全体的に一貫して、はじめから終わりまでこの映画の世界なのだ。


だから最初の時点で入りこめないと、後が苦しい。ツッコミ役が弱いのも惜しい。毒は薄い。元・子役のヤク中自殺常習者、室町のエピソードでさえも映画の雰囲気を壊してしまうほどのインパクトはない。


(しかし室町及び彼のエピが一番好きだ。土屋アンナ演じる悪魔的ヤンキー看護婦との絡みにはたいへん萌えさせていただいた)(そしてこのエピソードが浮いていないという時点で監督のうまさを実感する)


そんなわけでこの映画の評価は人による。特殊な存在感と相変わらずのすてき演技でおいしいところを持っていっている阿部サダヲ、彼の演技を許容できるかどうか、うっとうしいしつこいと感じるかおもしろいと笑えるかどうかで楽しめる/楽しめないが変わってくるのではないかと思う。


ちなみに作中でパコが読んでいるガマ王子vsザリガニ魔人は実在する絵本だそうです。欲しくなるなぁ…。あ、あとこんなこといってるくせにラストで泣いちゃったのはないしょにしてね。